台湾一の名峰 タロコ渓谷
さて、タイ人の中年女性の好意に甘えてバスに同乗させてもらう。しかし、安心はできない。天祥を出発した時は、すでに予約していた電車が出発する1時間前。われわれGOKUHを含めた3人は事故や渋滞がなく花蓮駅に着くことができることを願うばかり。
さて、バスが走り始めてから10分ほどして、渓谷の途中でバスが止まってしまった。「どうして止まるの?ただでさえ急いでいるのに!」と心の中で焦っていると、バスにもともと乗っていたタイ人たちがバスを降りはじめて
の~んびりと渓谷を散策し始めたのだ。
しかし、もともと観光バスに乗っていたのは彼らタイ人。(われわれはタダで乗せてもらっている身)しかも、このバスより他に花蓮に帰る手段が無いので、仕方なく彼らの渓谷散策につきあう。

しかし、例のタイ人の女性の話しを聞くと、どうもこの渓谷がただの渓谷では無く、タロコ渓谷といって、台湾を代表する名峰だというのだ。
確かにその風景は凄かった。

でも、もうちょっと急ごうか。。。

時間が無く、やけになったGOKUHと中国マニアの友人はタロコ渓谷の洞窟の中でラジオ体操を踊りはじめる。
15分ほど渓谷を散策して再びバスに乗る。今度はバスの中ではタイ人たちのカラオケ大会である。彼らは中国の歌や何だかわけのわからない(・・・失礼)歌を大音量で歌い続けている。
そんななか、例のタイ人の女性がわれわれに何か歌を歌うようにマイクを差し向ける。カラオケの歌本もある。彼女は中国語で「日本の歌も沢山あるよ。(あるアルよ~。)」と言うが、その日本の歌っていうのが、大昔の演歌ばかり。そこで、われわれ3人はマイク1本を交代に持って、「カントリーロード」を歌うのであった。
「Country ro--ad,take me ho--me to the pla--ce I belo--ng----♪」
完全に電車の時間に間に合わないと諦めていたわれわれではあったが、歌をうたい終わるとすでに花蓮市内、時計を見るとまだ10分くらい時間がある。
もしかしたら間に合うかも?
という甘い期待が生まれた。
そして、実際に間に合った。バスは花蓮駅前に着く。時間は電車発車の3分前である。われわれはその奇跡に感動した。しかし、駅前のホテルに荷物を預けていることを思い出したわれわれは、まずそのホテルに向かわなければならない。「大丈夫、全力で走れば間に合う!」そう信じて走り出そうとした時、例のタイ人の女性がわれわれに話しかけてきた。
とても親しげに、そして別れを惜しむかのようにわれわれに名刺を差し出して、別れの言葉を告げようとしている。
ありがとう、とっても感謝してます。
ですが、行かせてもらえませんか?

本来だったら、時間をかけて御礼の言葉を言いたかった。しかし、われわれは失礼を承知のうえで簡単に挨拶してその場から走っていった。
駅前からホテルまで全力で走って1分。
ホテルで荷物を受け取って、再び駅まで走って1分。
そして、駅の改札から電車の中に駆け込む。時間は秒単位で進んでいた。
息を切らす3人。「カチッ」という何かが跳ねる音。GOKUHはプラットホームに大切なボールペンを落としたことに気づく。GOKUHはそれを見なかったかのように走り続ける。
頭の中では、踊る大捜査線のテーマが流れていた。
アオキのように走るGOKUH。
そして、
間に合った。
その6秒後に電車は走り出した。
何ヶ月ぶりに自分の心臓の鼓動を聞いた。
汗が流れていた。
さて、翌日。
台湾人である知り合いに話しを聞いた。われわれが天祥に行ったことを報告した。
しかし、その台湾の知り合いによると、天祥は観光地でもなんでも無いらしい。観光地として最も有名なのは、(帰りにタイ人とバスで寄った)タロコ渓谷なのだという。
だとしたら、最初からタロコ渓谷にだけ行っていればよかったという説もあるのだが・・・・。
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